温泉は「地下から湧出あるいは汲み上げる25℃以上の湯、又は1種類以上のミネラルなどを含む湯、あるいは噴出する蒸気」を言います。
https://www.env.go.jp/nature/onsen/point/index.html
どんな成分が必要なのかは、一番下の付録に書いておきますね。一方、源泉の温度が25℃未満で別表の成分が一つも規定を満たしていなかったら、それはただの「井戸水」です。そんな井戸水を「温泉です」というと景品表示法違反になります。いわゆる不当表示ってやつです。工業用水を温泉と偽って捕まったのが 泉佐野市にある施設。(リンク切れならこちら)
同じ施設内でも、湯船によって温泉だったり、水道水だったり、温めた井戸水だったりしますので、温泉を使っている湯船には温泉法による掲示がされています。
こちらは箱根温泉供給1号泉の掲示書ひな形。これを保健所にハンコ押してもらって初めて掲示できます。
ま、これも源泉の分析書であって、湯船の中の湯の分析書ではないのは以下でご説明します。
環境省さんが、このような 平易なパンフレット を出しております。(リンク切れなら こっち)
気分転換ならともかく、「十分な効用を得るには2?3週間の湯治ですなぁ。」だそうです。週末に日帰り温泉に行ったり、2泊3日で温泉旅館に泊まって効用は期待しないように。hi
温泉を選ぶ際に「源泉かけ流し」というのは魅力的な単語ですよね。ところで、温泉旅館などでよく見聞きする「源泉かけ流し」の定義をご存知でしょうか?
「源泉」「掛け流し」ですから、上記の「温泉の源泉」から採取した湯を「湯船に直接投入し、溢れた分は排水として排出する。いつもお湯は温泉井戸からくる新鮮な湯の浴槽」を「源泉かけ流し」と考えるのが普通と思います。
が。
残念ながら「源泉かけ流し」について 法的定義はありません。
一般社団法人日本温泉協会に加盟している施設は
「浴槽に常時新湯を注入して溢流(オーバーフロー)させ、溢流した温泉を再び浴槽に戻して再利用しない『かけ流し』の状態で、注入する新湯については温泉を利用しなければなりません。また、単に『かけ流し』とうたうよりも自然の状態に近い印象を与える強調表示であるため、温泉へ加水することはできないことになっています」
となっていますが、日本温泉協会に加盟していないアウトサイダーには無関係な「内規」です。
温泉の源泉井戸で積載した温泉湯をタンクローリーで温泉施設に運び、貯湯(ちょとう)タンクに貯留させ、水道水あるいは井戸水と混ぜながら湯舟に投入し、循環装置で消毒しながら1週間使い続ける温泉施設で「源泉かけ流し」を標榜しても、なんら違法性はありません。おそらく優良誤認で景品表示法違反に問われることもないでしょう。
冒頭の不当景品類及び不当表示防止法第7条第1項の規定に基づく大阪府知事の措置命令を受けた泉佐野市(JCC2515)の大規模浴場は天然資源である温泉を一滴も使用していないにもかかわらず「温泉」を標榜していたので「優良誤認」に当たるとして措置命令を受けました。工業用水を温めた湯と温泉法で云う「単純泉」では効用に大差はありませんが、法的には明確な違いがあるということです。
極端な話、温泉法の解釈上は湯船の中に1%でも温泉が入っていれば「温泉」です。ここいら辺は、100%果汁でないとジュースを標榜できない農林規格とは大違いですね。
一方「天然温泉」を標榜するには公正取引委員会の「温泉表示に係る景品表示法上の考え方」に従う必要があります。(リンク切れなら こちら)
湯船の底から適温で湧いてくる温泉を、そのままオーバーフローして利用している古くからの温泉宿は、実は今や大変貴重な存在です。
例えば蔦温泉の旧館。
途方も無い量が湯船の底から延々湧いているので、湯がいつも澄んでいるのが蔦温泉の凄いところ。雪中行軍訓練後の陸上自衛隊の隊員が団体さんで入っても大丈夫。
ところでPGJの1980年代からの疑問は、これだけの湧出量を処理する排水施設は一体どれくらいの容量なのだろう?なのですが、今調べてみると「自然湧出温泉」のみの施設からの 排出基準は特例的に緩い ようです。(リンク切れなら こちら)
勝手に湧出している温泉(湧泉)はさておき、特に動力ポンプで汲み上げた温泉は大事な天然資源ですし、揚湯ポンプのエネルギー代もかかります。ほっとくと配管に、このようにミネラルがスケールとして付着し詰まってしまいますから施設の維持費も莫大にかかります。兵庫県の有馬温泉では数日でこうなってしまう配管もあるそうですよ。
「お湯は地下からタダだんべ」と思っているあなたは経済が分かっていない愚か者ですhi。
有用な地下天然資源なのです「一度使って廃棄」ではもったいないです。循環しフィルターでゴミ(主として人毛)をろ過し、消毒し、再加熱し湯舟に再投入するのは、悪いことではありません。ただし、循環させると悩ましい微生物制御をしなくてはなりません。COVID-19でも露呈しましたが、微生物制御は日本人が苦手なものの一つでねぇ。
ABC兵器という言葉がありました。Atomic、Biological、Chemical 核兵器、生物学兵器、化学兵器です。ラドン温泉やラジウム温泉は(A)核物質による温泉ですが命の危険はありません。但し、BC兵器的危険はありまして。
まずはB兵器的怖さ。温泉で死ぬというと、温泉旅館に泊まって深酒して湯に浸かって脳血管障害だの、心臓が止まっただの、単純に溺死だのというのが一般的ですが、温泉業界の方々が一番気にしているのは食品業界同様に微生物性の危害です。
レジオネラ属菌(Legionella spp.)を病原体とするレジオネラ症です。抵抗力の弱い人、喫煙者、大酒呑みがかかりやすく、COVID-19同様に進行が早いため、急激に重症になり死に至ることもあります。
[Image of the human respiratory system with Legionella bacteria in lungs]
公衆浴場に行くと湯船に湯を注ぐ注ぎ口が設置されている場合が多いです。そこから注いでいる湯量は「意外と少ないな」と思われるケースが多いでしょう。場合によっては止まっていることもあります。濤々と注いでいないと「温泉に来たのに損した」気になる人もいるでしょう。一方「注いでいる量が少ない割には湯が温かいな」と思うでしょ。
あれだけ大きい湯舟で、溜まっている数トンの湯の熱容量が大きいとは言え、湯は温め続けていないと冷めて水になるのは家庭の湯殿と同様。湯船の底から温めているわけでもないのに何故冷えないのか?それは、どんどん冷えた湯を底から抜いてボイラーで再加熱しているからなのです。これは家庭用の沸かし直し機能がついた浴室給湯器と同じです。
ただし、その V利用、再加熱した湯は写真のような水面上から注いではいけないのです。あそこから注ぐのは循環させていない未使用の源泉からの湯か水道水に限ります。
以下、厚労省の「レジオネラ症の知識と浴場の衛生管理」から:
注ぎ口からドウドウと湯が流れている温泉施設は、莫大な湧出量の源泉を持っているか、アホ設計かのどちらかです。殆どの温泉施設の湯舟への水面上の注ぎ口からの湯が細々なのは上記基準を遵守しているからなのです。
2002年の大事故の設計不良とは、この循環湯を頭の上から降り注いでいた大馬鹿設計のことでした。この事件の2年前に 厚生省生活衛生局長通知第1811号 で以下のごとく禁止していたにもかかわらず ですね。
温泉を利用する公衆浴場の給湯系統は新湯と循環湯に別れます。以下が概念図です。
このように「新湯系統」と「循環湯系統」を分離する訳は、循環系のレジオネラやアカントアメーバを経済的に根絶するのは無理だからです。何しろ東京都の調査ではいわゆる「日帰り温泉など」の内、1/3の施設からレジオネラが検出されたそうですから、生存していると思って対策をとらねばなりません。万が一、有害なレベルで残っても、飛沫にならなければリスクは低いからです。この点、缶詰の商業的殺菌(ボツリヌス菌に汚染されていると思って1億人に死者1人以下程度になるように殺菌する)と考え方が似ています。
宮崎のケースは循環湯系統が新湯系統につながっていたという訳。それではレジオネラ噴霧施設としか言いようがなく、開業早々に死者を出すに至りました。
さて、幼児や老人が感染しやすいレジオネラ症ですが、レジオネラ感染は特に爺さんに多いのだそうです。長年の喫煙で呼吸器がもろくなっているとか、婆さんは胸までしか湯に浸からないが、それに比べて爺さんは顎まで浸かるので飛沫を吸いやすいとか。いろいろ説があるようです。水面の上から湯を出していなくても気泡風呂などで飛沫を発生させているところがありますが、これまた清掃消毒を失敗しているとレジオネラ噴霧装置になりますから、そういう原因もあるのでしょう。
スリル満点の温泉道楽ですが、リスクを知って適切に避ければ(汚いところには行かない)死ぬことはないでしょう。PGJは規模に比して源泉の湧出量/供給量の少ない温泉や 大規模日帰り芋洗温泉 (リンク切れならこちら) などは避けています。hi
JAの街なかの食品産業がHACCPすら導入できていないのですから、JAの行楽型公衆浴場が微生物制御を満足に実施できていなくても何ら不思議はありません。(だから1/3が陽性?)
また以下を読んで理解して制御できている業者さんは少ないでしょう。
入浴施設におけるレジオネラ症防止対策 | リンク切れならこちら | 旧版はこちら
ZLでは温泉におけるレジオネラやアカントアメーバのリスクは当局により広く 知らされております。
ところが本邦では一般向けの積極的な告知は殆ど見ません。何故でしょうねぇ。
大規模施設の冷房冷凍用クーリングタワーもレジオネラ噴霧器リスクが高いので、JAでも施設管理者や労働安全担当者にはよく知らされているのですが、意外と一般向けは見ません。1/3の公衆浴場がダメダメなんですから、もっと広く知らせても良い気がします。
温泉に行って「塩素くさいなぁ」と思うこともあるでしょう。それは温泉施設があなたの健康を守るために消毒をしている証です。逆に臭いがしなかったら、それは大量の湧出量のある源泉を持つ温泉施設か、あるいは。。。。。私はゴメンです。
JA8(北海道)においては、温泉施設で硫化水素ガスによる重篤な事故が複数起きております。北海道に限らずJAでは温泉法などによる構造基準を満たしていないがために 死人を出しているケース もありますが、JAの検察は科学に疎い為か施設責任者が起訴されたことは稀です。(私のかかりつけ医が「あの人達、頭悪いから、論理的な説明しても無理」と言っていたのが思い出されます。)
硫化水素は火山ガスの一種で Wiki によりますと「死ぬよ!」 です。
その昔、神奈川県箱根町の大涌谷園地の遊歩道では「硫化水素何ppmで即死」みたいな看板があちこちに立っていましたし、世界的な火山学会が日本で開かれたときは「うわ!すげー!こんな致死性ガスが吹き出しているところに観光客を歩かせるんだ!ジャパンすげー!」と海外の火山学者の腰を抜かさせたという武勇伝もあります。
温泉施設で換気扇がブン回り、換気口が天井近くと床近くにあるのはガス中毒による死者を出さないようにするための仕組みなのです。別に結露で湯殿にカビが生えないように換気扇が回っている訳ではなくてですね(そういう場合もあるかもしれんけど)。
温泉業者に限らず、法や技術基準を知る努力もしない業者が国民をドンドン殺すJAの文化に手を焼いたのか、環境省は温泉の硫化水素ガスでこれ以上死体の山を築かないようガイドラインを策定しました。
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/soguide.pdf
ま、これが温泉利用業者が読まないのは食品業界でHACCPがまったく普及しないのと同じ状況ですが。
首都圏の温泉は箱根や草津と違い化石水由来の温泉です。石油石炭を化石燃料とか言いますが化石水にも燃える成分が含まれておりまして。それらをメタンとか天然ガスとか言います。
というわけで、温泉を汲み上げたら含まれている可燃性ガスを大気中に放出しないと浴室や源泉井戸周辺が燃焼室になってしまいます。
21世紀になって渋谷で温泉施設が大爆発を起こしたのが、この温泉由来の可燃性ガスによるものでした: 渋谷温泉施設爆発事故
温泉水を健康に良さそうだと飲む人。また、清涼飲料水として売りたい人は結構居ます。
温泉水なら何でも飲めるという訳ではございません: https://www.spa.or.jp/onsen/528/
ちなみに、昨今流行りのエアリフトポンプで揚湯している源泉の場合にはポンプ作動油が湯に混ざる懸念があるので基本的に許可されません。水中ポンプで揚げているか自然湧出でないと飲泉許可は出ません。さらに、これに水道法の水道水の水質基準が加わる自治体もございます。
コンビニでペットボトル入り飲料が100円で売っているから、自社の源泉の湯やミネラルウォーターを詰めて売っても安く作れて儲かるだろうという素人がいっぱい居ますが、飲料メーカーは毎分数百本の充填速度で詰めるから、あの値段で売れるのです。毎分2?3本を手で充填したらボトル原価も手間賃もバカ高くなりますので1本500円で売っても利益が出ません。工業を知らない人々はしばしばこういう馬鹿な話を始めます。赤字が増えるだけだからおやめなさい。
ZLでよく見かけるハンギ料理は、蒸気井の蒸気で料理を蒸して作る料理です。これを日本でやるとしたら?「蒸気温泉調理の衛生指針」なんてのはないから、温泉利用基準(飲用利用基準)を準用するしかないでしょうね。一応温泉蒸気が食品に残るわけですから、食品衛生法でも「飲用適」の水を使えと申しております。
「温泉」というと何を思い浮かべますか?普通の皆さんが考えるのは「温泉旅館」、「温泉のあるホテル」、「日帰り温泉」というところが一般的なところではないでしょうか。
冒頭の温泉法ですが、これは環境省所管です。この法律は、天然資源である地下温泉資源を保護し、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、及び温泉の利用の適正を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的としているので環境省。
浴場や湯殿に温泉成分や効用の掲示があるのは温泉法の義務表示です。逆に表示のないところは温泉ではなく、水道を沸かしたものだと思ってよろしい。同じ温泉施設でも浴槽によって温泉水だったり水道水だったり井戸水だったりするのは珍しいことではありません。
では浴場の衛生管理も温泉法か?というと浴場の管理は厚生労働省所管の「公衆浴場法」なんですなぁ。
温泉の湯を飲用で売りたい、あるいは客に飲ませたい場合:
部屋の布団が汚いね とかになると これまた厚生労働省所管の 旅館業法 なんですなぁ。
この他に食事を出すための食品衛生法の基準、建物の安全の為の建築基準法や消防法への適合も必要です。結構大変です。いきなり素人が始められる商売ではないですな。
この他によくある勘違いが、「温泉の出る井戸(温泉源泉井戸)のある土地を買ったら井戸もついてくる」。残念でした。温泉源泉の所有権と土地の所有権は分離していますので、源泉付き土地を買っても温泉が使えるわけではありません。ただし、そんな土地(鉱泉地)でも源泉があると固定資産税はバカ高いのです。バブルになるとアホな土地を買う人が出ますが、皆様ご用心。
温泉法の 定義 では、「温泉」とは、地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいいます。
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1. 温度(温泉源から採取されるときの温度): 摂氏25度以上 2. 物質(以下に掲げるもののうち、いずれか一つ) |
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|---|---|
| 物質名 | 含有量(1kg中) |
| 溶存物質(ガス性のものを除く) | 総量 1,000mg 以上 |
| 遊離炭酸(CO2)(遊離二酸化炭素) | 250mg 以上 |
| リチウムイオン(Li+) | 1mg 以上 |
| ストロンチウムイオン(Sr2+) | 10mg 以上 |
| バリウムイオン(Ba2+) | 5mg 以上 |
| フェロ又はフェリイオン(Fe2+, Fe3+)(総鉄イオン) | 10mg 以上 |
| 第一マンガンイオン(Mn2+)(マンガン(II)イオン) | 10mg 以上 |
| 水素イオン(H+) | 1mg 以上 |
| 臭素イオン(Br-)(臭化物イオン) | 5mg 以上 |
| 沃素イオン(I-)(ヨウ化物イオン) | 1mg 以上 |
| ふっ素イオン(F-)(フッ化物イオン) | 2mg 以上 |
| ヒドロひ酸イオン(HAsO42-)(ヒ酸水素イオン) | 1.3mg 以上 |
| メタ亜ひ酸(HAsO2) | 1mg 以上 |
| 総硫黄(S) [HS- + S2O32- + H2S に対応するもの] | 1mg 以上 |
| メタほう酸(HBO2) | 5mg 以上 |
| メタけい酸(H2SiO3) | 50mg 以上 |
| 重炭酸そうだ(NaHCO3)(炭酸水素ナトリウム) | 340mg 以上 |
| ラドン(Rn) | 20(百億分の1キュリー単位)以上 |
| ラジウム塩(Raとして) | 1億分の1mg 以上 |
平たく言いますと源泉井戸から出てきたときに水の温度が25℃以上あるか、25℃未満でも上記別表の成分が一種類でも規定量を超えていれば「うちの源泉は温泉です」と標榜できます。