話の種

第44話 海上輸送事故 コンテナが届かない

Port of Napier
Port of Napier(ネイピア港 / ニュージーランド)

SCM(サプライチェーン・マネジメント)が発達し、世界中の貨物がA地点からB地点へ、日本から外国へ外国から日本へと輸送されています。
輸送形態には色々ありまして、原油などの液体物はタンカー、多量の野菜や穀類はバルク船などを使いますが、現在多くの貨物が輸送手段として用いているのが海上コンテナです。

海上コンテナの種類は多岐にわたっておりまして、ざっとこれくらいあります

今回は、その中でも圧倒的多数を占めるドライコンテナでの輸送と、その途中で発生する貨物破損について説明します。
適切な貨物積み付け方法を知らない素人さん(貿易会社にも結構居るから困る)による輸送中の製品破損や原料汚損というものはかなり多く、そのため海上輸送保険料がむやみに高い原因にもなっています。

ドライコンテナで輸送する場合、主に次のような破損が起こります。

  1. 貨物濡れ、カビ、錆び
  2. 荷崩れ破損
  3. 熱害変質/破損
  4. 本船沈没による全損

1. 貨物濡れ、カビ、錆び

さて、PGJが知る中で一番多いのが、この水濡れ破損です。結露、コンテナレイン、カビ、濡れ損、といろいろな名前がついているくらいですから、如何に多いかというところでしょう。
なぜカビが生えるか? > 「カビが生える条件が揃ってしまうから」。この一言に尽きます。

カビが生える条件は、多くの金属が錆びる条件でもあります。この一連の事象をまとめて「コンテナ内部の水分が水滴や過剰な湿気となって貨物品質を損なう」と表現することができます。

具体的にはどのようなことが起きるのか?
一番多いのが「輸送用段ボールがカビる、濡れてシナシナヨレヨレになる」という損害です。
紙の繊維であるセルロースは濡れると不可逆的変化を起こします(さすが紙容器会社にいた人の説明だろ)。簡単にいうと「濡れた紙は乾かすとシワシワになりますよ」という事です。

これで何が困るか? まず見栄え重視の日本の市場では、皺になった段ボール箱は顧客に受け入れてもらえません。それが店頭に並ぶわけでもない輸送用の外箱であったり、業務用部品の箱であってもです。日本においては品質とは目に見える事柄だからです。

むろん、ヨレヨレ段ボールにほぼ漏れなく付いてくる「カビ」の方が大問題です。カビの生えた化粧箱に入った製品は売れませんし、それこそカビた製品自体を売ることもできません。
原料貨物がかびた場合には原料全損となり、生産計画までパァになりますから、下手すりゃ国内工場が止まります(コーヒー豆原料やカカオ豆原料は結構かびるらしい)。

金属も湿度が高ければ錆びが出ます。電子回路などが錆びたら故障や火災の原因になります。皆さんがPCを買われるとプラスチックフィルムに厳重に包まれ、中に除湿剤が入った状態で届きますね。あれも海上輸送時の湿気からPCを守るためでもあるのです。

なぜコンテナ内が湿気でムレムレになるのか?

コンテナの換気穴
換気穴は四隅の小さな穴だけ
a. ドライコンテナは極めて換気が悪い

20ftあるいは40ftのドライコンテナは33立方メートル/67立方メートルの容積がありながら、換気口は直径5mmほどの穴が四隅にあるだけです(2か所の時もある)。このため、中に溜まる湿気を排出することができません。
また、ドライコンテナのドアは雨などが入らないようにゴムパッキンが付いており、換気を悪くしておかないと潮風で貨物が傷んでしまうため、ドライコンテナはある意味で「密閉容器」です。(※玉ねぎ輸送用のファンコンテナは動力ファンで強制換気していますが例外です)
b. 湿気のもとになるものがコンテナ内にたくさんある

「段ボールに入った缶詰しか入ってないよ」「パレットに載った機械部品しか載ってないよ」と思うでしょう。実は湿気のもとは山ほどあります。 すべて蒸発するかどうかは別として、200kgの木製パレットや段ボールがあれば、最大40リッターの「湯気の素」が33立米の中に充満している計算になります。そりゃ風呂場状態になります。
コンテナ内温度記録グラフ
実測データロガー温度変化グラフ
c. 寒暖の差をもろに受ける

左のグラフは、食品缶詰を満載したFCLにデータロガーを積載して記録したコンテナ内温度記録です(区間:ニュージーランド北島 → 日本 東京港)。

上段:貨物の天面(天井から20cm、コンテナ中央部)。下甲板(Under deck stow)の下層に積載したため洋上(グラフ中央)では緩やかに上がるのみですが、陸上輸送中・積載港CY(グラフ左側)と、日本到着後の留置・通関・横持ち期間(グラフ右側)で日々の激しい寒暖差が出ています。
下段:貨物中段。食品缶詰は熱容量が大きいため、周りの缶詰が断熱材のように働き非常に安定しています。

このグラフが示すのは、「貨物自体はまだ冷えているのに、コンテナの室温だけが急上昇する状況がある」ということです。暑い夏に冷蔵庫から冷えた缶ビールを出すと一瞬で結露しますよね。それが20トンもの貨物規模で起きるわけです。そりゃコンテナ内はびしょびしょになります。
【よくある結露シナリオ】

とりあえず調査してみたら?

データロガー 温湿度プローブ

温湿度と衝撃を1か月計測する場合、かつて船会社に依頼すると50万円近くかかりましたが、今では安価で高機能なデータロガーが多数登場しており、自社で簡単に計測・検証できます。

・温湿度データロガー: 機材例(アスクル)
・衝撃データロガー: 衝撃データロガー製品例

湿度が上がってカートンや紙製補強材の強度が落ちてきたところに輸送時の衝撃が加わると、荷崩れは目も当てられない大惨事になります。

湿気・結露対策の種類

甲案: リーファーコンテナ(定温・冷蔵コンテナ)を使いなさい(確実だが運賃が高い)。

乙案: ドライコンテナを使う場合、以下の手順を徹底しなさい。

【ステップ1:乾いた良質なコンテナの選定】
1. 中を検査して床や壁が濡れているようなら持って帰らせる。
2. ドアのゴムシールが破損・劣化していたら別のコンテナに変えさせる。
3. ダークテスト: コンテナ内に人が入りドアを閉め、光が差し込んでこないか確認する。隙間やピンホール穴がないか確かめる必須検査。
換気穴の目張り 除湿剤設置 指示書ダウンロード

【ステップ2:換気穴の目張り密封】
コンテナ内側の四隅にある換気穴を布粘着テープ等で完全にふさぎます。コンテナをほぼ完全な密閉容器にしてしまいます。これを怠ると、外気が流入し続けて除湿剤が早期にパンク(飽和)してしまいます。

【ステップ3:除湿剤の正しい配置】
いよいよバン付け(Vanning / 英語圏ではLoading)です。
除湿剤をパレット上や貨物の上に配置していきます。PGJは除湿剤を「貨物の上に乗せる」方法を強く推奨します(上記指示書をご活用ください)。壁面テープ貼りは航行中に剥がれ落ちやすく、万一ゲルが破袋するとデバン時の清掃が大惨事になります。

クラリアント製 CD-II:食品缶詰・レトルト満載の20ftオセアニア航路で通年10個で十分でした。
KINDRY:乾燥食品半積載20ft欧州航路(夏季)で10個だとやや不足気味でした。

【Q&A:メーカー推奨個数とPGJの個数が違う理由】
「メーカーサイトでは20ftで30個以上とあるのに、なぜPGJは10?12個で済むのか?」という質問をよくいただきます。
その理由は、下図のとおり「コンテナ内部の空気量(空隙容積)」の違いです。

コンテナ内空気量の違い
自動車をスカスカに1台積む場合と、缶詰を天井近くまで満載する場合では、庫内の空気の量が全く違います。除湿剤は空気中の湿気を吸うものですから、空気が少なければ必要個数も減ります。
初めての方は指定量から試し、デバン時にゲル化(吸湿完了)しきっていない除湿剤があれば、それは入れ過ぎの証拠です。

2. 荷崩れ破損

木材による荷留め
木材を釘打ちして隙間を固定

20ftや40ftの海上コンテナは巨大で頑丈そうに見えますが、それを運ぶトレーラーやクレーン、荒れる外洋のコンテナ船は、それらを軽々と振り回す超巨大マシンです。

急ブレーキがかかったバスの中で吊革に掴まっていなければ吹っ飛ぶのと同じで、コンテナ内の荷物もしっかり固定(ラッシング・ショアリング)されていなければ、ブレーキや揺れのたびに庫内で激しくスライド・衝突を繰り返します。

パレットの寸法とコンテナ床面をぴったり合わせるのが基本ですが、隙間ができる場合は滑り止めの角材を床に釘打ちして固定します。

圧縮破損した段ボール

固定用ベルトを強く締めすぎたり、湿気で箱の強度が落ちていると、写真のように段ボールが座屈・圧縮破損を起こします。こうなると中の化粧箱にも全てシワが入って全損となります。ToT)

荷崩れ防止の技術:
水性結束糊: パレット上の荷崩れ防止に非常に効果的です。
貨物用エアバッグ(ダンネージバッグ): パレット同士や壁面との隙間に差し込み、エアで膨らませて隙間を完全に埋める手も一般的です。

エアバッグ施工例

3. 熱害変質/破損

真夏の直射日光や赤道直下の甲板上に積載されたコンテナ内部は、容易に60?70℃を超える超高温サウナになります。
樹脂製品(特に熱に弱いABSなど)が変形してしまうのはもちろん、食品やケミカル品にとっても致命的なダメージとなります。
※食品が熱害でどうなるかについては、「食品事故:缶詰ボンバー事件」をご覧ください。

4. 本船沈没・大事故

荷主にとって本当に泣きたくなるのが、船火事、機関故障による漂流、そして最悪の本船沈没です。
船火事では貨物が燃えるだけでなく、煤煙に燻されて異臭がこびりつきます。また電源喪失が起きればリーファーコンテナの冷凍機が停止し、中身の冷凍食品・生鮮品はすべて腐敗・全損します。

外見上形が残ったまま港にたどり着いた場合、日本海事検定協会(NKKK)に「売り物になりません」という損害証明を出してもらう必要がありますが、彼らが専門外の特殊品などは、荷主自身が「なぜ売り物にならないか」を証明・説明せねばならず、膨大な手間と時間がかかります。
火事で燻り臭のついたケチャップをブラインドテストにかけ、「ほら、全員が火事臭くて不味いと言ったでしょ!」と立証する羽目になったりもします。

CIFや発地扱いのDDU条件なら荷主としては「いっそ綺麗に沈んでくれた方が保険処理が楽」とすら思えますが、欠品を防ぐために急遽B747ジャンボを航空チャーター便で手配したりすれば莫大なコストが発生します。これらは現場努力での予防が難しいため、「保険を万全にかける」しか防衛策がありません。

21世紀の代表的なコンテナ船・貨物船海難事故

海没したコンテナの行方

嵐の荒天時などに波にさらわれて海没したコンテナは、密閉度が高いと水面直下を漂流して他の船舶の衝突リスクになったり、やがて水圧で潰れて海底に沈んでいきます。

【関連・参考リンク】
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