話の種

高松塚古墳とキトラ古墳。 怠慢による文化財の破壊。

国立科学博物館 菌の世界昭 和の時代に発見された奈良県の高松塚古墳とキトラ古墳は、その壁画の見事さから発見当時から考古学者や一般市民を巻き込んで大層な盛り上がりを見せていま した。 ともかく保護維持をしなければいけないというので大変な予算が投じられ空調設備が整えられ、そして、それらは見事に機能せずどちらの古墳もカビの 塊と成り果てました。
いったい、何が失敗の原因だったのでしょうか?
一言、日本のお役所仕事が馬鹿だからです。

では、どれだけ馬鹿かを「食品技術者の目から見た飛鳥古墳の彩色壁画保存失敗の理由」としてお話しましょう。

1. アルコールでカビは死にません。

どうも、あの人々はアルコールですべての微生物が殺せると思っているようです。 (微生物とは、原虫、カビ、真菌、酵母、細菌、ウイルスのすべての総称で す。 念のため) 微生物の中には、アルコールを生み出す酵母や、アルコールを分解して酢酸に変化させる(つまりお酢を作る細菌=酢酸菌)もあります。  それらはアルコールでは死なない。
そもそも、アルコールはカビには効き目が薄いのです。 また芽胞菌の芽胞にはまったく効かない。 そういう薬剤なのです。 
まして、アルコール噴霧をすると、酢酸菌が「わーい餌だぁ」と言いながら(無論声は出さない)アルコールを餌に酢酸を作ります。 
(日本酒は米から作られるのは、皆さんご存知のとおり。 そしてお酢はお酒から作られるというのは知っていました?)

漆喰の壁面は酸に犯されぼろぼろ。 さらに野生種の酢酸菌には多糖類による粘膜を作るタイプがあって、これらが壁面に薄い乳白色の幕を掛けたように広がり ます。 そしてこのを幕を養分として黒かびが生えます。 そこへアルコールをまた撒くと言う悪循環。 おまけにその黒カビを餌にダニが石室内で生活して、 さらにカビの胞子を壁画に振りまいているそうで。。。。。
考古学者とお役所がやっているのがこの悪循環です。 数十年失敗し続けて、まだわからないのかねぇ?

(2010追記:この記事の初稿から5年後、文化庁の出したレ ポート PGJのような文化財素人に気付いたことがなぜ分からなかったのよ?)

2. 二重ドアの使い方を知らないスカポンタン

高松塚古墳の石室の入り口にはエアロックと言いますが二重ドアが設けてあります。 これは汚染されている外気が直接入らないようにするためで、外 側のドアを開けてエアロックに入ったら、外側のドアを閉めて、入ってきた人の服をエアシャワーで掃除するとともに、エアロックの中の空気をフィルターでろ 過した清浄な空気に入れ替えてから、内側のドアを開けるという仕組みです。 こうすれば外気からカビの胞子を含んだ空気を吸い込むことはありません。
ところが、せっかくの二重ドアを両方開けっ放しにしているのが、あのお馬鹿な人々です。 テレビカメラが入れば二つの扉を同時に全開にしてお出迎え、偉い 先生が来れば同じようにお開けしてお出迎え。
中にいろいろ微生物が進入して当たり前な状態です。 
食品工場の品質検査でこの状態を見つけたら、私は有無を言わさずその工場を不合格にします。

3. ガス消毒しろよ

輸入野菜、果物の消毒には青酸ガスが使われます。 エチレンオキサイドガスも昔は使われていました。 このほかにもダニやカビを殺せる ガスで壁画を傷めないガスはいろいろ有るはずです。 なんでガス消毒しないのかが分からない。

4. 窒素ガス置換しろよ


カビが増殖するには酸素が必要です。 あの古墳の石室には酸素があったわけです。 「発見当時の空気の比率を維持する」などという科学的にまるで意味のな い選択した結果、外界から持ち込まれたカビとダニとその他微生物があの狭い石室で食物連鎖のサイクルを作り上げてしまいました。 
この食物連鎖を壊すには、連鎖のどこかを切らなくてはなりません。 切るためにはどうするか? 酸素を石室内の空気から取り除いてしまえばよいのです。  つまり、窒素ガス充填です。 酸素がないと物が長持ちするのは「話の種」の「エージレスの話」を 見ていただければ分かります。

酸素が無ければカビも昆虫も生きることができません。 つまり、壁画はカビで汚損されません。  
ただし、同じ無酸素保管でも炭酸ガス置換保管はこの壁画保存のケースには不向きです。 なぜなら壁画のある漆喰が持っている水分と炭酸ガスが結び付いて、 酸性ソーダ水になり漆喰を犯すからです。 ですから、窒素ガスで置換せねばなりません。
窒素ガスで置換すると人が中に入る際に酸欠で死にますから、酸素マスクが必要になります。 もしくは、人が入るたびに清浄ろ過済み有酸素空気と入れ替える ことが必要になります。
そういう注意が必要ですが、壁画を美しく守るためには窒素ガス置換が最善の方法でした。

なぜ、あの人たちは窒素ガス充填の選択肢を取らなかったのでしょうか?

日本の考古学の世界は科学として非常に遅れています。 一人の大家や、カリスマが何かを言うとそれを否定することを遠慮する空気があります。 かくして旧 石器遺跡の大捏造が起きたわけですが、あの愚かな文化はいまだに日本の考古学界に巣食っているのでしょう。 明日香村の古墳も、誰か考古学だ け詳しい偉い先生がこうしようと決めて、それが変更できない金科玉条になったのでしょう。 そして飛鳥美人たちはカビだらけになりまし た。

日本人学者の扱っている考古学でも、海外の遺跡を扱っている人たちは、建築学、土壌学、古生物学、微生物学、植物学、工芸、土木工学、染色学、地球物理学 などのエキスパートがチームで仕事をしています。 いわば3人寄れば文殊の知恵、10人寄れば釈迦無二に匹敵するってやつです。 理科系の世界では、それ こそジョイントプロジェクトなんてあたりまえなんですけどね。 

何か変更するには責任問題が出てくる、で何もしない、で手遅れになるまでほっぽらかし、という日本文化の悪い面を集めて作られたのがあの古墳保存プロジェ クトだったわけです。 未来の子孫に文化財を残そうと考えた人がおらず、セクショナリズムだけで生きている人たちが遺跡をカビだらけにしました。

彼らには思想がありませんでした。 ISO9000などの西洋の品質手法の監査で最初に重視されるのは、その組織の「思想、哲学」です。 
その組織の目標は何なのか? どういう哲学を規範として活動するのか? が、最も重要視されます。 これがあいまいになっている組織はISOの認定なんて 受けられません。 しかし日本には、そんな目標曖昧な組織が多く見られます。
目標曖昧のまま70年前戦争を始めて大負けに負けたのに、まだ懲りないのか日本のお役人どもよ。。。。 というか、日本人共通の弱点か? やれやれ

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