話の種

食品添加物大嫌い

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まず最初に、 この項の、図はクリックすると拡大版の図が得られます。

さて今回は皆さんが大嫌いな食品添加物をめぐるお話です。
数年前に母校で授業をした資料を再構成しました。

では

まずは、皆さんが一番よく耳にしている食品添加物とはなんでしょうか?食品添加物というとどんなものが思い浮かびますか?

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保存料、酸化防止剤、ここいらへんが不人気の2大帝王のようなものです。 

保存料(ソルビン酸、安息香酸など)、酸化防止剤(アスコルビン酸やトコフェロールなど)、pH調整剤(クエン酸など)、結着補強材(リン酸塩など)、調味料(アミノ酸、核酸)、乳化剤(ショ糖エステル、グリコールなど)、発色剤(亜硝酸Na、硝酸Kなど) 

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食品添加物というと素人さんは食品業界が使う毒薬のようなものだと思ってい るけれど、その本当の意味や定義をわかっている人は恐ろしいほど少ない。 食品衛生法第4条第2項
「添加物とは、食品の製造の過程において又は加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用す るものをいう。」 

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なぜ、食品添加物が使われるのか? というと ? 食品の製造や加工のために必要な製造用剤マーガリンは植物油脂と乳成分や水を乳化して作るけれど乳化剤がないと乳化できない、乳化できないからマーガリン にならない。 
つまりここでは乳化剤は加工に必要な製造用剤というわけだ。
コーラなどの炭酸飲料に含まれている炭酸ガスも食品添加物です。 炭酸ガスが無かったら炭酸飲料は造れないよね?  
金箔で飾ってあるケーキ。 あの金箔も食品添加物。

食品の風味や外観を良くするための甘味料、着色料、香料など甘味料で一番有名なのが世界的にはサッカリン、日本では味の素が大量生産法を確立したパルス イート、本名L-アスパルチル-L-フェニルアラニンメチルエステルが有名ですが、こういうノンカロリー甘味料ができたおかげで、私も朝から晩までコカ コーラを飲み続けていても糖尿病にならずに済むわけです。
まして、糖尿病の人が甘いものを楽しむ自由を与えたのですから、素晴らしい大発明ですね。 
着色料なども食品に色の変化を与えてくれます。 
ちなみに化粧品に入っている着色料は最近は食品添加物として認められている着色料が増えましたが、つい2000年前後で食品用色素としては1980年以前に禁止に なったものが結構使われていました。  
口紅に含まれる着色料の量は色つきキャンデーに含まれている量の100倍を超えます。
顔をこってり化粧で着色した奥さんたちが、合成着色料反対! なんていうのを見ながら私らはあきれ返っていたものです。

食品の栄養成分を強化する栄養強化剤最近、特定保健栄養食品などの俗に健康食品と呼ばれる食品が増えてきましたね。 
鉄分強化、ビタミン強化、亜鉛リッチなどを謳い文句にするサプリメントとかいうやつです。 

この業界は特に「天然成分配合」と言う謳い文句が大流行ですが、天然だろうが化学合成品だろうが添加物には変わりない。 

ちなみに、サプリメントは気持ちを加速するだけで投資した分に値する効き目は期待できません。 
もし顕著な効果が出たらそれは医薬品になります。 
医薬品なら薬事法に則って副作用の確認などの作業が発生しますし、製薬工場で製造し、許可を受けた販売店で販売されなくてはならず食品工場では生産できな い。
作って売ったら薬事法違反でもある。  
つまり効かないからこそ健康食品なんですね。  
クリックすると大きい表示 さて、食品の保存性を良くする保存料、酸化防止剤などこれが素人さんに一番 評判が悪い食品添加物です。保存料や酸化防止剤の話をする前に。。。 
多くの一般人の皆さんは、なぜか、いわゆる「無添加食品」を選びます。
では何が入っていないと無添加食品と言えるのだと思いますか?
  
クリックすると大きい表示 無添加食品の定義は、じつはありません。 
無いから、不誠実もしくは単に頭の悪いメーカーや販売店が「無添加」の文字をいいように振り回して消費者を混乱させているのです。 
保存料が本当に入っていなくて保存料無添加と書くのは良いでしょう。 着色料が本当に含有されていないのなら着色料無添加でも良いでしょう。
ただ「無添加食品」と言ったらなんだかわからないでしょ。 
豚肉無添加のポークウインナーとか、大豆無添加の味噌、なんていうあり得ない食品だって、ただ「無添加食品」いうカテゴリーでくくったら表現としては間違 いないわけです。

クリックすると大きい表示 クリックすると大きい表示ありえないものを、さもあるように。 または当たり前のことを、さ も特別のように言うことを欺瞞と言います。
「無添加」を宣伝文句にしている製品や会社は、怪しい会社が多い。 
「馬鹿を騙すのは簡単」と思ってやっている会社と専門教育を受けていない「本気で思い込んでいる馬鹿」な人々が運営している会社がやっているケースが多い ですね。
欺瞞は公正取引法違反になるから、違法すれすれの表記をするわけで、科学を学んだ人はそう簡単には騙されないが、そうでない人は本当に簡単に騙されるよう です。 

日本食品添加物協会は「無添加」という表現について、このように説明しています
(pdfファイルです。 アクロバットリーダーが必要です)
クリックすると大きい表示 では戻って、保存料や酸化防止剤について説明するとしましょう。
保存料は食品の保存性を良くし変敗を予防する薬剤です。腐ったり、風味が悪くなったり、食中毒になったりするリスクを低減する添加物です。
防腐剤と勘違いしている人がいますが、悪いが防腐剤なんてものが食品に使われていたのは皆さんがうまれるずーーっと前です。 
現在日本で使われている食品用保存料であるソルビン酸にしても、安息香酸にしても、保存料は本当に効き目は弱い。 

1974年頃まで使われていたAF2[2-(2-furyl)-3-(5-nitro-2-furyl)acrylamide]という防腐剤は、防腐剤と 言うより殺菌剤で、これを使用して、本当に腐らない食品が作られていました。冷蔵庫に入れなくても腐らないクリスマスケーキや、製造工程が汚くて異常に細 菌汚染されていても腐らない魚肉ソーセージなんてものが存在したんだね。

食品工場でも、包丁で手を切ったりすると「おいAF2持ってこい」と言っていたんですよ。 殺菌剤だから傷が化膿しないんだね。 
これが、食品原料として発がん性があるんじゃないか?というので使用禁止になったのが1974年。 

日本の食品工場の衛生度がこれをきっかけに向上したと思われます。
なぜかというと、AF2の代わりに使われだしたソルビン酸などの保存料は、AF2に比べると恐ろしいほど効き目が薄い。 
つまりきちんと清潔な工場で衛生的に製造し、かつ衛生的に温度と時間に留意して流通させないと腐っちゃうからね。
ちなみに、AF2禁止と同時に保存料そのものから手を引いて保存料無添加に 切り替えた業界があります。 
その商品は今も冷蔵不要でスーパーやコンビニで売られています。 何だと思います?

答えは魚肉ソーセージ。あれはクレハロンフィルム、レトルト殺菌、水分活性の制御で成り立っている安いけどハイテクな商品だったリする。 
魚肉ソーセージも、レトルトパックのカレーも中身の長期間保管を可能にしている技術はほぼ同じ物です。 これを商業的殺菌と言いますが、これはこちらで説明しています。

さて、現在出回っているのがソルビン酸などの保存料で、カビやサルモネラや黄色ブドウ球菌などの食中毒菌にはそこそこ効くのだが、物を腐敗させる枯草菌な どの腐敗菌にはあまりうるわしくは効かないのです。
食中毒菌は意外と繁殖力が弱いので、よほど条件がそろわないと健康に害を及ぼすほどの細菌数に増えない、普通は食中毒菌より先に腐敗菌が先に増えてしまう ので、腐敗菌などの代謝物で食中毒菌の発育が阻害されて、毒素を出したり、人に感染して症状を出したりするほど増殖することができません。 

それに、腐敗菌が増殖したものは「腐っている」わけで悪臭や異常な味を呈しているので腐った食品を食べる馬鹿者は基本的に居ないから、腐ったものを食べて 食中毒になる人はあまり居ない。
細菌性食中毒の厄介なところは、味や色、風味が変わらないのに、食品が有害化するということです。 
食中毒菌による食中毒はなぜ起こるか? というと、色々原因はありますが、なにより最大の理由は腐ったようには見えないから、人が異常の無い食品として食 べてしまうからです。
偶然が重なって食中毒菌が、腐敗菌より早く増殖すると、見た目も味も変わらないけれど、健康に即有害な食品ができてしまう。 

簡単に言えば食べると当たる食品ができてしまう。 食中毒菌も腐敗菌も食品が原則10度以下で保管されていれば賞味期限内に腐ったり食中毒の元になったり する危険性は無いのですが、恐ろしいのは消費者や、食品工学を学んでいない調理人などの最終使用者が、実に恐ろしい保管方法をとったりするわけです。 
スーパーでウインナー買って、車の中に置きっぱなしで別の買い物をして、冷蔵庫に入ったのは半日後。だとか、
仕入れた要冷蔵のロースハムスライスを冷蔵庫に入れず、野菜と一緒に半日積んでおいた。 なんてことは当たり前にある。
そこで、保存料なるものが出てくるわけです。 

頭の悪いスーパーのバイヤーや生協活動に熱心な主婦には「ヨーロッパのハムやソーセージには保存料がはいっていない」と力説する方々がいますが、食肉製品 の歴史の長いヨーロッパの人々は食肉製品の食中毒の恐ろしさを知っていますから、買ってきたらすぐ冷蔵庫にしまってしまうし、そもそも、流通販売時の温度 は日本の10℃以下よりももっと低い4℃以下である。

この4℃以下というのは実に重要な温度であって、4℃以下で育つ細菌はあっても、4℃以下で毒素をだす細菌はないということ。 
つまり安全温度なんだね。なぜ日本ではそれが10度以下なのか? 役所が馬鹿だから。 としか言いようが無い。か?
ともあれ10℃以下に満足に保管できない消費者がいるから、ましてや4℃以下に温度制御できない国であるから、保存料が必要になってくるというわけです。   おまけに店頭でもろくでもない温度で保管している例は山のようにある

つまり、昔の防腐剤が総合殺菌剤だとしたら、いまの保存料はハムソーセージの分野では温度上昇時に食中毒菌が増える速度を遅くする為の保険として使用され ている物だと思ってください。 これくらい効き目が違います。現代の保存料はとしての役目は当然果たすけれど、何より最大の目的は食中毒菌にはそこそこ効 くということで、食中毒の防止です。 

この保存料というものは、使用してもよい食品が厳しく制限されています。 
缶詰やレトルト製品には使用が禁止されているのは、きちんと熱殺菌すればほとんどの細菌が殺菌できるからで、ベーコンに保存料が禁止されているのは、きち んと作れば乾燥していて水分活性が低いから保存性が高く保存料を必要としないからです。
また、弁当やケーキに保存料を使ってはいけないのは、清潔に製品の設計に留意して製造し温度管理など保管に留意すれば保存料が無くてもその日1日くらいは 製品が喫食可能であるからで、保存料に頼る必要は無いからです

皆さんが良くお世話になるコンビに弁当には「いろんな薬が入っている」という噂話を良く聞くと思います。
なにかしら入っているんですよ。

仮に今、これを「第3の保存料」と名づけましょう。今言ったようにお弁当には保存料を使用することは禁じられています。 
しかし、一方、弁当のようなものを無菌で生産することは不可能。 現在の日本のコンビニエンスストアの売り上げの大きな柱がお弁当です。 
主力商品で食中毒でも出そうものなら、三菱自動車の燃えるパジェロのように会社を傾けます。 
そこで、コンビに各社は子会社や下請け会社である弁当製造工場と食品事故防止のために知恵を絞るわけです。

この、だれでもできる弁当屋というやつは、実は優秀な人材が居ないことでも食品業界でも特徴的な業界でもあります。 乾いた雑巾を絞るようなもので、そう そうアイデアは出てこない。 わが国では優秀な人材は機械工学や電子工学、情報技術に行ってしまうから、我々農学はパッとしない。  まして、農学すら縁 遠い人がやっているケースがほとんどなんだな。
ところがそういう知識不足の需要があれば、そこへ製品を売り込んでくる食品添加物製造の人々が居ます。  
クリックすると大きい表示  そして、生み出されたのが第3の保存料。 
これを弁当や水物工業界では日持ち向上剤と呼びます。これは、主として、細菌に対する弱い阻害性をもつ物質と、pH調整剤の混合物でできています。
細菌の発育に阻害性を持つ物質というのが、食品添加物メーカー各社のノウハウと腕の見せ所なのですが、おおむね次のスライドようなものでできています。
 クリックすると大きい表示 グリシンはアミノ酸の一種で砂糖に似かよった弱い甘味があって。 苦味を和らげ、塩なれ、酢なれ効果 がある。細菌類の細胞壁の合成阻害することで最近の増殖を抑えているといわれています。
塩なれ、酢なれってわかります?
塩なれとは、本来入っている塩分より食べて感じる塩からさを少なく感じる現象のことを言います。
アミノ酸には塩気を弱く感じさせる作用があります。 たとえていいますと、お味噌汁。 関東の方にはおみおつけ。 
この味噌汁の塩分が1%から1.2%、田舎仕立ての塩辛い奴だと1.4%くらいある。 試しにね。 1%の塩水を作って呑んで御覧なさい。 塩辛くて呑め ませんよ。 
ところが、お味噌汁だと飲めてしまうのです。 

その秘密はアミノ酸、お味噌と言うのはご存知の通り発酵食品です。 大豆や米を発酵させて作ります。 つまり大豆や米のたんぱく質がアミノ酸に変わるわけ です。 たくさんの種類のアミノ酸があればあるほど深みのある美味しいお味噌ですね。 このアミノ酸が味噌汁の中の塩気を弱く感じさせているので、1%の 塩水をのんで塩辛いという人でも、味噌汁は塩辛くなく美味しくいただけるのです。これが、ハムソーセージにもいえます。 

ともかく味の素がが入っていると、美味しく感じる日本のお客様に、味の素を入れていない高級ハムソーセージを試食させると、昨今の減塩ブームもあります が、しょっからい、健康に良くないと大騒ぎになります。まぁこういう人たちは、「普段私はいいものを食べていません」と宣言しているようなものなんです が。

充分熟成したハムは熟成中にアミノ酸が肉から生まれて、塩気が弱く感じるようになりますが、こんな上物は皆さんの口にはめったに入らないから、忘れてよろ しいです。酢慣れは、塩慣れのお酢版ですね。 酸味が出ていても酸味を感じないようにしてしまう効果があるわけです。 特にこのグリシンて言うやつは。

 クリックすると大きい表示 これがどういうことかというと、塩分が強くなると食品は長持ちします。 これは水分活性が落ちるからなのは食品保蔵学でやったとおり、酢を使うということはpHを下げる、酢漬けなどの酸性食品は保存性が高くなるのは、これまた食品保蔵学でやった通り。学生に質問>> 酸性食品はpHいくつからの食品を言う? 答えはpH4.6以下が酸性食品、これよりpHが高い食品は低酸性食品。 ここがややこしい。 

で、話を元に戻すと、pH調整剤でpHを落とし、pH4.6以下にすると食べ物がすっぱくなる。 舌の感応の鋭くない人は4.3くらいでも酸味を感じないけれど、ともかく微生物制御の為に酸を入れ食塩を多く入れればすっぱく塩辛くなる、これをごまかす目的の為にもアミノ酸が添加されるわけ。 

さらにグリシンの場合は、アミノ酸そのものが細菌の増殖を阻害するというおまけ付き。
特に耐熱性の芽胞を作る細菌に対して有効。でも保存料ではないから、カビ、酵母などの真菌類に対してはほとんど抗菌性を示さない。 芽胞菌といえば食品を腐らせるバチルス系の細菌は芽胞菌ですから、それなりに効くということです。

つまり日持ち向上剤とはこのような食品や食品添加物を混和して製造された、加工食品原料の一種でpHを低下させたり、水分活性を低下させたり、特定の微生物の発育を阻害したりして。(ここ、大事だから理解してね)賞味期間の短い、保存性の低い食品に数時間又は数日といった短期間の腐敗、変敗を抑える目的で 使用される製剤。
クリックすると大きい表示  法律で定められた定義ではないほとんどの場合、食品原料でできている調味料(アミノ酸)の表示しかしなくても違法にはならないし、本心では保存目的でリゾチームを使っていも一括表示には「酵素」と表示すればそれでよろしい(2枚上のスライド参照)。 というわけで、皆さんがコンビニ弁当を食べる際、ケーキ を食べる際にその原材料表示を見てみるとよろしいでしょう。 

酵素やアミノ酸と書いてある裏側にはそういう意味が含まれていることがあるのです。いま、多くの食品工場はかなり衛生度が上がっています。 
しかし、流通業者の品質は、まだまだですし、まして一般消費者は、昨今の理科教育の欠如もあって、とんでもないことを平気でやる。 
夏の朝に買った弁当を車に入れっぱなしで昼間に食べるとか、メーカーや昔の人が考え付かないことをします。 昔は弁当は自分やお母さんが作ったものです。  ですから、何が腐りやすいとか、腐らないようにするにはどうしなくてはいけないとかわかったものですが、最近は弁当はコンビニで買うものだから、そういう身を守る為の知識が消費者にない。

そこで、お馬鹿な消費者がとんでもないことをして、その苦情をメーカーに振られたらかなわないというのは各食品会社の本音です。 でも消費者は無意味に保存料が嫌い。そこで日持ち向上剤というものが出てくるわけです。「保存料」と言われている物は、結構広範囲の多くの種類の細菌や真菌の発育を阻害しますか ら、今言った、「特定の微生物しか発育を阻害できない」というところが、どうも保存料として登録されない理由のかもしれません。 これは私のあてずっぽね。
クリックすると大きい表示 特 定の微生物の発育を抑えて、食品を変質から守る保存料でない保存料は日持ち向上剤のほかにも実はあります。特定微生物の発育阻害剤 とでもいいますか。ワインに入っている酸化防止剤は硫酸ナトリウムだが、食品衛生法上ワインに使う際には酸化防止剤として登録されている。ぶどうの皮には野生酵母がついてい る。 

野性というだけあって、株ごとの性格性能がてんでんばらばらである。 昔は、この野生酵母を使ってワインを醸造していたわけだけど、現在は、品種改良した酵母を購入したり、自家培養したりして酵母の性格をしっかり押さえてワインを醸造している。

しかし、いくらいい酵母があっても、原料ぶどうが大量の野生酵母に汚染されているわけで、まずこれを制御しなくてはいけない。 そこでもっとも安くて簡単なのが、この本来酸化防止剤だった硫酸塩を使う方法です。 硫酸塩でぶどうについていた野生酵母は活動できなくなるので、設計どおりの優秀なワインができ るようになるわけです。おかげで、高級ワインの値段は昔から比べるとだいぶ安くなったようですね。 (もっとも日本のワインは高すぎ)    
次が、缶コーヒーの乳化剤。 これはショ糖エステルというしろもので、エステルというぐらいだから本当に乳化剤らしい性質ものです。 缶入りの、特にホットで売られている缶コーヒーには間違いなく入っているのがこの糖エステルです。  何に効くかというと、これは耐熱芽胞菌 の生育を阻害する性質がある。 ホットで売られるコーヒーは、高温培養しているのとおんなじだから、60度以上の温度帯が最適温度の好熱菌がすごい勢いで増殖する。 で缶コーヒーの味がおかしくなったり、膨らんだりする。これを防止するのが糖エステルで、偶然に効果が発見されまして、おかげで日本中に缶 コーヒーが出回っております。 
ホット販売禁止のコーヒーがありますが、それは乳化剤が入っていないからなんですね。
ちなみに、この好熱菌を殺すには120℃で1時間半ほど殺菌しないといけませんが、そんなに強い熱を掛けるとコーヒーが不味くて飲めなくなる。 というわけでショ糖エステルは使用されています。
我が北里にもっとも身近なのは畜産製品ですが、畜産製品にも似たような事例があります。 それは発色剤。 

この発色剤はミオグロビンを赤く発色させるわけですが、このほかに隠れた役目があります。
そのひとつがボツリヌス菌の生育阻害です。
日本でボツリヌス中毒というと慣れ寿司やカラシレンコンが有名だが、西洋では生ハムやサラミの中毒が有名です。 ところが発色剤を使うとボツリヌス菌を抑えて中毒がおきにくい。  
クリックすると大きい表示  以前居た会社で、無塩漬ウインナーを作ったことがありました。
無塩漬とは、発色剤を使用しない、塩漬工程のない食肉製品の加工法です。 発色剤を使わないくらいだから保存料も使わず、その代わり真空パックで売り出しました。 
当時の法律ではここまですると「無添加」という表示できたのでした。
あのころは生協などから、むやみと「無添加製品」を作ってくれといわれて怪しげな製品を作ったものです。
ボツリヌス菌というのは真空してあるとはじめて増殖を始める細菌だから、発色剤無添加で保存料無添加で真空パックなんていうのはちょっと失敗したら地獄行きの商品なわけです。 
地元の保健所は本当にいやな顔をしました。 うちの管内から死人が出たら困る。 というわけですね。

というわけで、「保存料無添加」の製品には、食品メーカーの「いろいろな」創意工夫がぎっちり混ぜてあるというわけでした。

どれもこれも、消費者の皆さんを守るためなのね。 わかっていただけました?  
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