話の種

異物混入

異物混入クレームは、素人さんでも見れば分かるので、食品工業におけるポピュラーな苦情のひとつです。  今回は、異物クレームの数々について。

ゴキブリ

以前にも紹介しましたが、これが結構ある。 缶詰のホワイトソース、PETボトル入りとんかつソースや醤油等などの、固形分の無い液状製品の場合 は、まず工場で混入する事はありえないですね。  なぜなら調理釜や醸造タンクから充填機に至る間には、何重ものフィルターが仕掛けて有ります。 かりに 故意にゴキブリ様を混入さてもフィルターで濾し取られてしまいますから、まずありえない。  それに、そういう液体製品はポンプを使って圧送していますか ら、姿がきれいに残っているゴキブリ様なんてありえない。
そういう場合、殆どが家庭やレストランのキッチンでの混入です。 

缶詰や一部飲料のように加熱殺菌して製造している製品から「発見された」場合には、それが調理する前に発見できたのならカタラーゼ酵素活性試験で、熱が掛 かっていたかどうか判定できるから、明瞭にキッチン混入と断定できます。  

その他の昆虫や、植物片、カビや細菌などでもいっしょで、カタラーゼと云う酵素を持っていますから、この酵素反応試験で、最近入ったのか工場で加熱前に 入ったのか明瞭に分かります。 熱殺菌されていれば熱に弱い酵素であるカタラーゼは壊れて反応試験で反応を示しません。 熱殺菌を受けていなければ激しく 反応します。 簡単に見分けがつきます。
製品に、虫を入れて「異物混入だ」と偽装しても、工場の専門家たちはすぐに見破りますよ。  見破っても、説明が面倒くさいからお詫びの品を送って済ませ る会社もあるそうですがね。  

髪の毛

人の体毛は40代男性で日に40本以上抜けるそうです。 警察の鑑識が犯罪現場でせっせと掃除機かけるのは、この髪の毛を集める為でも有ります。  髪の毛一本で犯人につながるDNA解析ができますからね。  この様に、髪の毛がジャンジャン抜ける事は、まともな食品工場では周知の事実ですから、髪の 毛の落下防止のために色々な工夫をしています。 

 + 静電気で髪の毛が貼り付くネット帽子。
 + 作業場の出入り口へ、エアシャワー室を設けて、ゴミを一網打尽に吹き飛ばす。
 + ほこり取りの粘着ローラーで、作業服の表面の髪の毛やチリをからめ取る。
       等など、きりが無い。 

と云うわけで、まともに毛髪対策している食品工場では、毛髪異物混入と云うのはめったに起きない。 これまた、原因場所はたいてい皆さんのキッチン。 髪 の毛はカタラーゼ試験で確定は出来ないが、高い確度で察しはつきます。
それこそDNA検査すれば、苦情を言ってきた本人のDNAが検出されますが、コストが掛かるので各社ともやらないだけ。 裁判沙汰になれば間違えなくやり ます。

プラスチック片

魚の切り身にプラスチック片がついているというクレーム。 拡大したら、鱗だったという笑い話があります。 最近は魚に鱗があることをしらない人が います。 おそろしや。
食品工場には様々なプラスチックが使われていますから、それが混入する事がある。 
一番多いのは、原料の一時保管容器のかけらですね。 

それを防止する為に工場では、やたらと容器の破損の有無を確認している。 見つけたそばからラインから取り除いて修理に廻すか廃棄するかしてしまいます。  もし、原料に、かけらが混入した可能性がある場合は、その原料は検査するか捨ててしまいます。  廃棄コストや、苦情処理コストを考えたら捨てた方が安 いからです。  金持ちの工場では、X線検査装置で製品を全量検査している。 これはものすごい頼りになる。 但し処理速度が遅いのが玉に瑕。

プラスチック片で次に多いのが、フィルム片。 俗にビニールと呼ばれているけれども、ビニル製でなくても、あらゆる種類のプラスチックフィルム片は 異物の原因になったりする。 一番多いのは冷凍原料(例えば冷凍肉)にフィルムが食い込んでいて、更に溶ける前にフィルムを無理に剥がして、フィルムの切れっ端が肉に残ってしまうという不始末。

少ないけれども「あるんだー」と云うプラスチック異物が配管接続部のオーリング。
食品工場の液体充填工程はパイプラインで組み立てられています。 この連結部分にはシリコンゴムなどで作られたリングが入っています。 家庭の水道の蛇口 のパッキンみたいなものです。 食品工場では清掃のためやライン変更のために配管の分解結合を頻繁に行います。 この際、リングを傷めてしまうことがあり まして、そのかけらが製品に混入することがあります。 まったく無害ですが、お客さんを怒らせるには十分なシロモノ。 これはほとんどの場合フィルターで 濾し取られて製品には入らないのですが、たまに玉ねぎとか、ダイスカット野菜などの混ざったパスタソースなどの場合には、フィルターの目が通常の1mm以 下から、1cm程度に大きくしてあり、抜けてしまうことがあるのです。 

ねずみ!など

オーストラリアだかニュージーランドだかで、某M社冷凍のピザを買った消費者が箱から出して焼きました。 何切れか食べて、ふと見ると、見たくないものが こんがり焼けている。。。
ピザ台の下にペタンコになったねずみが挟まっていた。。。
これはすごい例ですが、他にも、ドライペットフードの工場でえさを盗みに来ていた鳩が包装機械に吸い込まれて10Kg袋に包装されてしまった。 なんて話 もあるそうですし。
ひどい工場は、本当にひどいもんですが、それは例外です。 ただし食品工学を学んでいない人が経営している会社の場合は例外ではなかったりします。

生きている蛆虫!

だんだん話がエグくなってきますがhi

半生タイプのドッグフード。 水分を残すために弱い加熱しかしていない製品がありまして。 原料の麦の粉にメイガという粉類が好きな蛾が卵を産んでいました。 その卵が弱い加熱で死にきらず生き残っていて、ドッグフードの中で孵化して。。。。  しかもメイガの幼虫は意外とあごが強くダンボールを食い破 り、、、、 蛆虫だらけのダンボールを発見した販売店さんからの怒りの電話はすごかった。。。らしい。   工場の害虫の制御というのはハエやゴキブリだけ気にしていればいいのではなくて、ありとあらゆる虫を工場の管理区画から叩き出すことを念頭に置かないといけません。 某日本のペットフード工場では工 場のいたるところにフェロモントラップというメイガの誘引ホイホイが仕掛けてありました。 「おー気にしてるな」と感心した覚えがあります。

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