話の種

「食品添加物大嫌い」の続き

皆さんが良くお世話になるコンビに弁当には「いろんな薬が入っている」という噂話を良く聞くと思います。
なにかしら入っているんですよ。

仮に今、これを「第3の保存料」と名づけましょう。今言ったようにお弁当には保存料を使用することは禁じられています。 
しかし、一方、弁当のようなものを無菌で生産することは不可能。 現在の日本のコンビニエンスストアの売り上げの大きな柱がお弁当です。 
主力商品で食中毒でも出そうものなら、三菱自動車の燃えるパジェロのように会社を傾けます。 
そこで、コンビに各社は子会社や下請け会社である弁当製造工場と食品事故防止のために知恵を絞るわけです。

この、だれでもできる弁当屋というやつは、実は優秀な人材が居ないことでも食品業界でも特徴的な業界でもあります。 乾いた雑巾を絞るようなもので、そうそうアイデアは出てこない。 わが国では優秀な人材は機械工学や電子工学、情報技術に行ってしまうから、我々農学はパッとしない。  まして、農学すら縁遠い人がやっているケースがほとんどなんだな。
ところがそういう知識不足の需要があれば、そこへ製品を売り込んでくる食品添加物製造の人々が居ます。  
クリックすると大きい表示  そして、生み出されたのが第3の保存料。 
これを弁当や水物工業界では日持ち向上剤と呼びます。これは、主として、細菌に対する弱い阻害性をもつ物質と、pH調整剤の混合物でできています。
細菌の発育に阻害性を持つ物質というのが、食品添加物メーカー各社のノウハウと腕の見せ所なのですが、おおむね次のスライドようなものでできています。
 クリックすると大きい表示 グリシンはアミノ酸の一種で砂糖に似かよった弱い甘味があって。 苦味を和らげ、塩なれ、酢なれ効果がある。細菌類の細胞壁の合成阻害することで最近の増殖を抑えているといわれています。
塩なれ、酢なれってわかります?
塩なれとは、本来入っている塩分より食べて感じる塩からさを少なく感じる現象のことを言います。
アミノ酸には塩気を弱く感じさせる作用があります。 たとえていいますと、お味噌汁。 関東の方にはおみおつけ。 
この味噌汁の塩分が1%から1.2%、田舎仕立ての塩辛い奴だと1.4%くらいある。 試しにね。 1%の塩水を作って呑んで御覧なさい。 塩辛くて呑めませんよ。 
ところが、お味噌汁だと飲めてしまうのです。 

その秘密はアミノ酸、お味噌と言うのはご存知の通り発酵食品です。 大豆や米を発酵させて作ります。 つまり大豆や米のたんぱく質がアミノ酸に変わるわけです。 たくさんの種類のアミノ酸があればあるほど深みのある美味しいお味噌ですね。 このアミノ酸が味噌汁の中の塩気を弱く感じさせているので、1%の塩水をのんで塩辛いという人でも、味噌汁は塩辛くなく美味しくいただけるのです。これが、ハムソーセージにもいえます。 

ともかく味の素がが入っていると、美味しく感じる日本のお客様に、味の素を入れていない高級ハムソーセージを試食させると、昨今の減塩ブームもありますが、しょっからい、健康に良くないと大騒ぎになります。まぁこういう人たちは、「普段私はいいものを食べていません」と宣言しているようなものなんですが。

充分熟成したハムは熟成中にアミノ酸が肉から生まれて、塩気が弱く感じるようになりますが、こんな上物は皆さんの口にはめったに入らないから、忘れてよろしいです。酢慣れは、塩慣れのお酢版ですね。 酸味が出ていても酸味を感じないようにしてしまう効果があるわけです。 特にこのグリシンて言うやつは。

 クリックすると大きい表示 これがどういうことかというと、塩分が強くなると食品は長持ちします。 これは水分活性が落ちるからなのは食品保蔵学でやったとおり、酢を使うということはpHを下げる、酢漬けなどの酸性食品は保存性が高くなるのは、これまた食品保蔵学でやった通り。学生に質問>> 酸性食品はpHいくつからの食品を言う?答えはpH4.6以下が酸性食品、これよりpHが高い食品は低酸性食品。 ここがややこしい。 

で、話を元に戻すと、pH調整剤でpHを落とし、pH4.6以下にすると食べ物がすっぱくなる。 舌の感応の鋭くない人は4.3くらいでも酸味を感じないけれど、ともかく微生物制御の為に酸を入れ食塩を多く入れればすっぱく塩辛くなる、これをごまかす目的の為にもアミノ酸が添加されるわけ。 

さらにグリシンの場合は、アミノ酸そのものが細菌の増殖を阻害するというおまけ付き。
特に耐熱性の芽胞を作る細菌に対して有効。でも保存料ではないから、カビ、酵母などの真菌類に対してはほとんど抗菌性を示さない。 芽胞菌といえば食品を腐らせるバチルス系の細菌は芽胞菌ですから、それなりに効くということです。

つまり日持ち向上剤とはこのような食品や食品添加物を混和して製造された、加工食品原料の一種でpHを低下させたり、水分活性を低下させたり、特定の微生物の発育を阻害したりして。(ここ、大事だから理解してね)賞味期間の短い、保存性の低い食品に数時間又は数日といった短期間の腐敗、変敗を抑える目的で使用される製剤。
クリックすると大きい表示  法律で定められた定義ではないほとんどの場合、食品原料でできている調味料(アミノ酸)の表示しかしなくても違法にはならないし、本心では保存目的でリゾチームを使っていも一括表示には「酵素」と表示すればそれでよろしい(2枚上のスライド参照)。 というわけで、皆さんがコンビニ弁当を食べる際、ケーキを食べる際にその原材料表示を見てみるとよろしいでしょう。 

酵素やアミノ酸と書いてある裏側にはそういう意味が含まれていることがあるのです。いま、多くの食品工場はかなり衛生度が上がっています。 
しかし、流通業者の品質は、まだまだですし、まして一般消費者は、昨今の理科教育の欠如もあって、とんでもないことを平気でやる。 
夏の朝に買った弁当を車に入れっぱなしで昼間に食べるとか、メーカーや昔の人が考え付かないことをします。 昔は弁当は自分やお母さんが作ったものです。 ですから、何が腐りやすいとか、腐らないようにするにはどうしなくてはいけないとかわかったものですが、最近は弁当はコンビニで買うものだから、そういう身を守る為の知識が消費者にない。

そこで、お馬鹿な消費者がとんでもないことをして、その苦情をメーカーに振られたらかなわないというのは各食品会社の本音です。 でも消費者は無意味に保存料が嫌い。そこで日持ち向上剤というものが出てくるわけです。「保存料」と言われている物は、結構広範囲の多くの種類の細菌や真菌の発育を阻害しますから、今言った、「特定の微生物しか発育を阻害できない」というところが、どうも保存料として登録されない理由のかもしれません。 これは私のあてずっぽね。
クリックすると大きい表示 特定の微生物の発育を抑えて、食品を変質から守る保存料でない保存料は日持ち向上剤のほかにも実はあります。特定微生物の発育阻害剤 とでもいいますか。ワインに入っている酸化防止剤は硫酸ナトリウムだが、食品衛生法上ワインに使う際には酸化防止剤として登録されている。ぶどうの皮には野生酵母がついている。 

野性というだけあって、株ごとの性格性能がてんでんばらばらである。 昔は、この野生酵母を使ってワインを醸造していたわけだけど、現在は、品種改良した酵母を購入したり、自家培養したりして酵母の性格をしっかり押さえてワインを醸造している。

しかし、いくらいい酵母があっても、原料ぶどうが大量の野生酵母に汚染されているわけで、まずこれを制御しなくてはいけない。 そこでもっとも安くて簡単なのが、この本来酸化防止剤だった硫酸塩を使う方法です。 硫酸塩でぶどうについていた野生酵母は活動できなくなるので、設計どおりの優秀なワインができるようになるわけです。おかげで、高級ワインの値段は昔から比べるとだいぶ安くなったようですね。 (もっとも日本のワインは高すぎ)
   
次が、缶コーヒーの乳化剤。 これはショ糖エステルというしろもので、エステルというぐらいだから本当に乳化剤らしい性質ものです。 缶入りの、特にホットで売られている缶コーヒーには間違いなく入っているのがこの糖エステルです。  何に効くかというと、これは耐熱芽胞菌の生育を阻害する性質がある。 ホットで売られるコーヒーは、高温培養しているのとおんなじだから、60度以上の温度帯が最適温度の好熱菌がすごい勢いで増殖する。 で缶コーヒーの味がおかしくなったり、膨らんだりする。これを防止するのが糖エステルで、偶然に効果が発見されまして、おかげで日本中に缶コーヒーが出回っております。 
ホット販売禁止のコーヒーがありますが、それは乳化剤が入っていないからなんですね。
ちなみに、この好熱菌を殺すには120℃で1時間半ほど殺菌しないといけませんが、そんなに強い熱を掛けるとコーヒーが不味くて飲めなくなる。 というわけでショ糖エステルは使用されています。
我が北里にもっとも身近なのは畜産製品ですが、畜産製品にも似たような事例があります。 それは発色剤。 

この発色剤はミオグロビンを赤く発色させるわけですが、このほかに隠れた役目があります。
そのひとつがボツリヌス菌の生育阻害です。
日本でボツリヌス中毒というと慣れ寿司やカラシレンコンが有名だが、西洋では生ハムやサラミの中毒が有名です。 ところが発色剤を使うとボツリヌス菌を抑えて中毒がおきにくい。 
 
クリックすると大きい表示  以前居た会社で、無塩漬ウインナーを作ったことがありました。
無塩漬とは、発色剤を使用しない、塩漬工程のない食肉製品の加工法です。 発色剤を使わないくらいだから保存料も使わず、その代わり真空パックで売り出しました。 
当時の法律ではここまですると「無添加」という表示できたのでした。
あのころは生協などから、むやみと「無添加製品」を作ってくれといわれて怪しげな製品を作ったものです。
ボツリヌス菌というのは真空してあるとはじめて増殖を始める細菌だから、発色剤無添加で保存料無添加で真空パックなんていうのはちょっと失敗したら地獄行きの商品なわけです。 
地元の保健所は本当にいやな顔をしました。 うちの管内から死人が出たら困る。 というわけですね。

というわけで、「保存料無添加」の製品には、食品メーカーの「いろいろな」創意工夫がぎっちり混ぜてあるというわけでした。

どれもこれも、消費者の皆さんを守るためなのね。 わかっていただけました?
  

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